親や家族の介護施設を選ぶとき、「どこを見たらいいのか分からない」「何を基準に選べばいいのだろう」と迷う方は少なくありません。介護施設は単なる「住まい」ではなく、大切な家族が日々の生活を送る「暮らしの場」です。
施設選びの失敗は、入居者本人の生活の質だけでなく、家族の精神的・経済的負担にも大きく影響します。この記事では、初めて介護施設を探す方でも安心して選べるよう、見学時に確認すべき10のチェックポイントを紹介します。
目次
- 施設選びで失敗しないための基本姿勢
- チェックポイント① 職員の対応と雰囲気
- チェックポイント② 入居者の表情と活気
- チェックポイント③ 施設の清潔さと臭い
- チェックポイント④ 食事の質と対応
- チェックポイント⑤ 医療連携体制
- チェックポイント⑥ レクリエーションと生活支援
- チェックポイント⑦ 安全対策と危機管理
- チェックポイント⑧ 居室と共用スペースの環境
- チェックポイント⑨ 料金体系の透明性
- チェックポイント⑩ 家族との連携方針
- 施設見学時の質問リスト
- 見学後の評価方法
- まとめ:自分の目で見て、感じて選ぶ
施設選びで失敗しないための基本姿勢
施設選びを始める前に、まずは基本的な心構えを押さえておきましょう。
複数の施設を比較する
一つの施設だけを見学すると、「これが標準なのだろう」と思い込んでしまいがちです。最低でも3〜5施設を見学し、比較検討することをおすすめします。
予告なしの訪問も検討する
多くの施設では事前予約が必要ですが、可能であれば予約した見学に加えて、予告なしの訪問(例:「たまたま近くに来たので」と立ち寄る)も効果的です。日常の様子を垣間見ることができます。
自分の目と耳と鼻を信じる
施設側の説明やパンフレットの内容だけでなく、実際に見て、聞いて、嗅いで感じたことを大切にしてください。第一印象は意外と重要です。
入居者の立場で考える
「自分が住みたいと思えるか」「自分の親をここに預けて安心できるか」という視点で見学することが重要です。
では、具体的なチェックポイントを見ていきましょう。
チェックポイント① 職員の対応と雰囲気
確認すべきこと
- 職員が入居者に話しかける際の言葉遣いや態度
- 職員同士のコミュニケーション
- 質問に対する返答の正確さと誠実さ
- 忙しそうな雰囲気や余裕のなさがないか
- 相談員や施設長の対応と知識
見るべきポイント
職員の対応は施設の質を最も反映する要素の一つです。特に、入居者への声かけが「〇〇さん」と敬称を使っているか、目線を合わせて話しているか、急かしたり強制したりする場面がないかを観察しましょう。
また、見学者である自分たちへの対応も重要です。質問に対して「それは個人情報なので」と一律に答えない施設よりも、プライバシーに配慮しながらも誠実に回答してくれる施設の方が信頼できます。
専門家のアドバイス
介護福祉士の佐藤さんは「職員の定着率も重要な指標です。『スタッフの平均勤続年数は?』『過去1年の離職率は?』と質問してみてください。3年以上の勤続者が多い施設は安定していることが多いです」とアドバイスしています。
チェックポイント② 入居者の表情と活気
確認すべきこと
- 入居者の表情(笑顔があるか、活気があるか)
- 身だしなみが整っているか
- ケア後の状態(髭剃り、整髪、爪切りなど)
- 車椅子や部屋に放置されていないか
- 入居者同士の交流の様子
見るべきポイント
入居者の表情は施設の雰囲気を如実に表します。全員が笑顔である必要はありませんが、絶望感や虚無感が漂っていないかは注意深く観察しましょう。
また、同じ姿勢で長時間放置されている入居者がいないか、身だしなみが整えられているかなども、ケアの質を示す重要な指標です。
専門家のアドバイス
老人ホームアドバイザーの田中さんは「コロナ禍以降、多くの施設で面会制限があり、入居者の様子を直接見ることが難しくなっています。可能であれば、オンライン面会の様子や、施設内の様子が分かる写真や動画を見せてもらうのも一つの方法です」と話します。
チェックポイント③ 施設の清潔さと臭い
確認すべきこと
- 施設全体の清掃状態
- トイレや浴室の清潔さ
- 施設内の臭い(特にトイレ周辺や居室)
- 換気の状態
- 害虫や害獣の痕跡がないか
見るべきポイント
介護施設では、排泄物の臭いが完全にないことは難しいですが、強烈な臭いがこもっている場合は要注意です。特に排泄物の臭いが廊下全体に漂っている場合は、排泄ケアの頻度や換気に問題がある可能性があります。
また、トイレや浴室などの水回りは特に注意して見ましょう。カビや汚れの蓄積は、日常的な清掃が不十分である証拠です。
専門家のアドバイス
介護施設経営コンサルタントの高橋さんは「臭いは時間帯によって変わります。可能であれば、朝(起床後)、昼(食後)、夕方(入浴後)など、異なる時間帯に訪問することをおすすめします。また、梅雨時期や夏場は臭いが強くなる傾向があるので、その時期の訪問も参考になります」とアドバイスしています。
チェックポイント④ 食事の質と対応
確認すべきこと
- 実際の食事を見せてもらう(できれば試食も)
- 食事介助の様子
- 献立表の内容と栄養バランス
- 嚥下困難な方への対応(ソフト食など)
- 好き嫌いや禁忌食への対応
見るべきポイント
食事は入居者の楽しみの一つであり、健康維持にも不可欠です。可能であれば食事時間に見学し、実際の食事風景を観察しましょう。スタッフが急かさずにゆっくり食べさせているか、自分で食べられる方には自立を促しているかなどをチェックします。
また、献立表を確認し、栄養バランスや季節感、行事食の有無なども確認しましょう。
専門家のアドバイス
管理栄養士の山田さんは「見学時に『献立表をいただけますか?』と1ヶ月分もらっておくと、バリエーションや栄養バランスがわかります。また、『嚥下困難な方の食事はどうしていますか?』『アレルギー対応はどうしていますか?』という質問も重要です」と話します。
チェックポイント⑤ 医療連携体制
確認すべきこと
- 協力医療機関との連携頻度と内容
- 看護師の配置状況(24時間体制か)
- 急変時の対応プロトコル
- 服薬管理の方法
- 定期的な健康チェックの頻度
見るべきポイント
特に持病がある方や医療ケアが必要な方は、医療連携体制が充実しているかが重要です。「協力医療機関がある」というだけでなく、実際にどのような連携をしているのか、具体的に確認しましょう。
また、施設内での看護体制も重要です。24時間看護師が常駐しているか、夜間はオンコール対応か、などの違いで安心感が大きく変わります。
専門家のアドバイス
訪問診療医の木村医師は「施設と医療機関の連携の質は、単に『協力病院があります』という言葉だけでは判断できません。『過去3か月で救急搬送は何件ありましたか?』『入院に至ったケースは?』『日常的な医師の往診や看護師の健康管理はどのように行われていますか?』など、具体的な事例を聞くことが大切です」とアドバイスしています。
チェックポイント⑥ レクリエーションと生活支援
確認すべきこと
- アクティビティの頻度と内容
- 外出支援の有無と頻度
- 個別のニーズや趣味への対応
- 理美容サービスなどの生活支援
- 季節の行事やイベントの内容
見るべきポイント
施設での生活は「ただ過ごす」だけでなく、充実した時間を過ごせることが理想です。レクリエーションの内容が画一的でなく、入居者の状態や好みに合わせた選択肢があるかどうかが重要です。
また、「全員参加」を強制するのではなく、参加したい人が楽しめる雰囲気かどうかも確認しましょう。
専門家のアドバイス
レクリエーション専門員の鈴木さんは「施設のブログやSNSをチェックすると、日常的な活動の様子がわかることがあります。また、『認知症の方や寝たきりの方も参加できるアクティビティはありますか?』と質問してみると、施設のケアの姿勢がわかります」と話します。
チェックポイント⑦ 安全対策と危機管理
確認すべきこと
- 転倒防止対策(手すり、バリアフリー等)
- 感染症対策の内容と実施状況
- 災害時の避難計画と訓練
- 事故発生時の対応と報告体制
- 身体拘束に対する方針
見るべきポイント
施設内の安全設備(手すり、バリアフリー設計、緊急通報システムなど)が充実しているかを確認しましょう。また、新型コロナウイルスなどの感染症対策も重要です。
特に注目すべきは「身体拘束」に対する施設の方針です。「原則として身体拘束は行わない」としている施設が望ましいですが、例外的に必要な場合の手続きや家族への説明方法も確認しておくと安心です。
専門家のアドバイス
リスクマネジメント専門家の佐々木さんは「事故やヒヤリハット(事故には至らなかったが、危うく事故になりそうだった事例)の記録と対策を確認することも大切です。『過去1年間のヒヤリハット件数は?』『どのような対策を取りましたか?』と質問し、誠実に回答してくれるかどうかでリスク管理への姿勢がわかります」とアドバイスしています。
チェックポイント⑧ 居室と共用スペースの環境
確認すべきこと
- 居室の広さと設備
- プライバシーへの配慮
- 共用スペースの快適さと利用状況
- 温度・湿度管理の方法
- 自分の物や思い出の品を持ち込める範囲
見るべきポイント
居室は入居者の「我が家」となる場所です。十分な広さがあるか、収納は適切か、持ち込める私物の範囲はどの程度かを確認しましょう。
また、共用スペース(リビングやダイニング、廊下など)も重要です。明るく開放的な雰囲気か、適度にくつろげる空間があるか、利用者が実際に集まっているかなどをチェックします。
専門家のアドバイス
建築士の井上さんは「施設の構造上の特徴も見ておくとよいでしょう。例えば、居室からトイレまでの動線は短いか、廊下は車椅子がすれ違えるほど広いか、共用スペースは日当たりが良いかなど。これらは入居後の生活の快適さに直結します」と話します。
チェックポイント⑨ 料金体系の透明性
確認すべきこと
- 入居一時金と月額費用の内訳
- 将来的な費用値上げの可能性
- 介護度が上がった場合の追加費用
- 退去時の返還金の条件
- 別途費用が発生するサービスの内容
見るべきポイント
料金体系は複雑で分かりにくいことが多いため、細部まで確認することが重要です。特に「これ以外の費用は一切かかりません」という説明については、具体的にどのサービスが含まれているのか、詳細に確認しましょう。
また、介護度が上がった場合や医療的ケアが必要になった場合の追加費用についても、明確に説明してもらうことが大切です。
専門家のアドバイス
ファイナンシャルプランナーの中村さんは「契約書や重要事項説明書は持ち帰って、じっくり読む時間を取りましょう。特に『退去条件』と『返還金の計算方法』は重要です。また、過去3年間の料金改定の有無も確認するとよいでしょう」とアドバイスしています。
チェックポイント⑩ 家族との連携方針
確認すべきこと
- 家族への報告頻度と方法
- 面会の自由度と時間帯
- 家族参加型のイベントの有無
- 要望や苦情への対応体制
- 看取りケアの方針
見るべきポイント
入居後も家族としての関わりを持ち続けられるかどうかは、非常に重要なポイントです。面会の自由度や、日常的な報告の頻度、方法などを確認しましょう。
また、「何かあれば遠慮なくご相談ください」と言うだけでなく、実際に家族の要望にどう対応しているかの具体例を聞くことも有効です。
専門家のアドバイス
ケアマネジャーの山本さんは「『家族会はありますか?』『家族からの要望でケアプランを変更した事例はありますか?』といった質問をすると、施設の家族対応の姿勢がわかります。また、『最期まで看ることができますか?』と質問し、看取りケアの実績や方針を確認しておくことも重要です」と話します。
施設見学時の質問リスト
施設見学時には、以下のような質問を準備しておくと効果的です。
基本情報について
- 施設の理念や特色は何ですか?
- 開設してからどのくらい経ちますか?
- 現在の入居率はどのくらいですか? 空き待ちの状況は?
- 平均入居期間はどのくらいですか?
スタッフについて
- スタッフの配置基準と実際の人数は?
- 夜間の職員体制はどうなっていますか?
- スタッフの研修制度や資格取得支援はありますか?
- 離職率や平均勤続年数はどのくらいですか?
ケアの内容について
- 個別ケアの方針はどのようなものですか?
- 認知症ケアの特徴や工夫は?
- 排泄ケアの方針(オムツ使用の基準など)は?
- 入浴の頻度と方法はどうなっていますか?
医療連携について
- 協力医療機関との連携内容と頻度は?
- 看護師の配置(24時間体制か)はどうなっていますか?
- 持病がある場合の対応は?
- 終末期ケア(看取り)の実績と方針は?
生活環境について
- 1日のスケジュールはどのようになっていますか?
- 外出や外泊の自由度は?
- 居室への持ち込み制限はありますか?
- 食事の選択肢や個別対応の可能性は?
見学後の評価方法
複数の施設を見学した後は、印象が混同しやすいため、以下のような方法で整理・評価すると良いでしょう。
評価シートの作成
10のチェックポイントごとに5点満点で評価し、合計点を出す方法が簡単です。さらに、特に重視したいポイントには重み付けをすると、より自分の優先順位に合った評価ができます。
第一印象と総合評価の比較
見学直後の第一印象と、冷静に考えた後の総合評価を比較してみましょう。大きな乖離がある場合は、なぜそのような違いが生じたのかを考えることで、自分が本当に重視しているポイントが見えてきます。
家族での話し合い
可能であれば、見学には複数の家族で行き、それぞれの視点から施設を評価することをおすすめします。異なる視点からの意見を集めることで、より総合的な判断ができます。
まとめ:自分の目で見て、感じて選ぶ
介護施設選びで最も大切なのは、「自分の目で見て、感じる」ことです。パンフレットやウェブサイトの情報だけでなく、実際に足を運び、空気を感じ、スタッフや入居者の様子を観察することが、後悔しない選択につながります。
また、完璧な施設はないという現実も理解しておくことが大切です。自分や家族にとって特に重要なポイントを明確にし、そこを妥協せずに選ぶという姿勢が重要です。
最後に、施設選びは一度で終わりではありません。入居後も定期的に様子を確認し、必要であれば転居も検討する柔軟さを持つことも、長い目で見た施設選びの一部と言えるでしょう。
大切な家族のための「終の棲家」選び。この記事がその一助となれば幸いです。
※この記事の情報は2025年4月現在のものです。介護保険制度や各施設の方針は変更される可能性がありますので、最新情報をご確認ください。


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