介護が必要になったとき、どのような支援が受けられるのか。多くの方が「要介護度が低いと、あまりサービスを利用できないのでは?」と不安に思われるかもしれません。実際には、要介護1と認定された方でも活用できる様々な制度やサービスが存在します。本記事では、要介護1の方やそのご家族が知っておくべき、意外と知られていない支援制度を詳しく解説します。
目次
要介護1とは
要介護1は、介護保険制度における要介護認定の区分の一つで、「部分的な介護を必要とする状態」を指します。具体的には、立ち上がりや歩行などに若干の支障があり、排泄や入浴、着替えなどの日常生活動作に一部介助が必要な状態です。
要介護1に認定されると、介護保険サービスの利用限度額(区分支給限度基準額)は1か月あたり16,765単位(約167,650円)となります。この金額の範囲内であれば、原則1割の自己負担(所得によっては2割または3割)でサービスを利用できます。
多くの方が見落としがちですが、要介護1でも様々なサービスや支援を組み合わせることで、より快適な生活を送ることが可能です。
介護保険サービス
意外と使える居宅サービス
訪問介護(ホームヘルプサービス)
身体介護だけでなく、要介護1の方も「生活援助」を利用できます。掃除、洗濯、調理などの家事支援を受けられるため、体力の消耗を防ぎ、自立した生活の維持に役立ちます。
訪問看護
「医療的ケアがなければ利用できない」と思われがちですが、体調管理や服薬管理、療養上の相談など、健康維持のために要介護1でも利用可能です。特に慢性疾患を抱えている方には有効です。
リハビリテーション
要介護1の段階こそ、積極的なリハビリが効果的です。通所リハビリ(デイケア)や訪問リハビリを利用することで、機能低下を予防し、状態の改善も期待できます。
通所介護(デイサービス)の選択的利用
一般的なデイサービスだけでなく、「運動特化型」「認知症ケア特化型」など、特定の目的に特化したデイサービスを選ぶことで、より効果的な支援を受けられます。例えば、軽度認知障害がある場合は、脳トレーニングに力を入れた施設を選ぶといった工夫ができます。
ショートステイの活用法
レスパイトケア(介護者の休息)としての利用
要介護1でも、介護者の休息や冠婚葬祭などの用事がある場合に、短期入所生活介護(ショートステイ)を利用できます。事前に計画的に利用することで、介護者の負担軽減につながります。
お試し利用としての活用
将来的な施設入所を考えている場合、ショートステイを「お試し入居」として利用することで、施設の雰囲気や介護の質を確認できます。
福祉用具レンタル・購入
要介護1では、以下の福祉用具がレンタル可能です:
- 手すり
- スロープ
- 歩行器
- 歩行補助杖
- 車いす(通常は対象外ですが、「例外給付」の申請により利用可能な場合あり)
また、以下の特定福祉用具は購入費の支給対象となります(年間10万円まで):
- 腰掛便座
- 入浴補助用具
- 簡易浴槽
- 移動用リフトのつり具の部分
意外な活用法:「例外給付」の申請
原則として要介護1では利用できない福祉用具(ベッド、車いすなど)でも、医師の意見書や状態に応じて「例外給付」の申請を行うことで利用できる場合があります。特に転倒リスクが高い場合や、特定の疾患がある場合は相談してみる価値があります。
介護保険外の支援制度
自治体独自の支援サービス
各自治体では、介護保険では対応していない独自のサービスを提供していることがあります。代表的なものには:
配食サービス
多くの自治体では、高齢者向けの配食サービスを実施しています。栄養バランスの取れた食事を自宅まで届けてもらえるサービスで、要介護1の方でも利用できることが多いです。価格も通常の配食サービスより安価に設定されていることが多いため、経済的にも助かります。
緊急通報システム
自宅で急に体調が悪くなった場合などに、ボタン一つで救急や支援センターに通報できるシステムです。ひとり暮らしの高齢者に無料または低価格で提供している自治体が多くあります。
ごみ出し支援
ごみステーションまでごみを持って行くことが困難な高齢者に対して、戸別収集を行うサービスです。要介護1でも利用できることが多く、申請すれば無料で利用できる場合もあります。
見守りサービス
定期的な電話や訪問で安否確認を行うサービスで、多くの自治体や社会福祉協議会で実施されています。孤立防止にもつながる重要なサービスです。
税制優遇措置
医療費控除
介護保険サービスの自己負担分や、おむつ代などは医療費控除の対象となります。年間10万円以上の医療費(所得に応じて上限あり)を支払った場合に適用され、所得税や住民税の負担軽減につながります。
障害者控除
意外と知られていませんが、要介護1でも「障害者控除対象者認定書」を市区町村から取得することで、所得税や住民税の「障害者控除」(27万円の所得控除)を受けられる場合があります。
おむつ代の医療費控除
医師が発行する「おむつ使用証明書」があれば、おむつ代を医療費控除の対象とできます。2年目以降は市区町村が発行する「確認書」で代用できる場合もあります。
各種割引制度
公共料金の割引
電話料金、NHK受信料、水道料金などの公共料金が、要介護認定を受けていることで割引される場合があります。各事業者に問い合わせてみましょう。
交通機関の割引
鉄道やバス、タクシーなどの交通機関では、介護認定を受けている方や障害者手帳をお持ちの方向けの割引制度があります。例えば、JRでは介護者同伴の場合に割引が適用されるケースがあります。
携帯電話料金の割引
各携帯電話会社では、福祉割引として基本料金などが割引されるプランがあります。条件や割引額は各社で異なるため、契約している携帯電話会社に確認してみましょう。
住環境整備の支援
住宅改修費の支給
介護保険では、手すりの取り付けや段差解消などの住宅改修に対して、20万円を上限に費用の9割(1割負担の場合)が支給されます。要介護1でも利用可能で、適切な改修を行うことで、自宅での生活がより安全で快適になります。
意外な活用法:「複数回申請」の可能性
原則として住宅改修費の支給は一生涯で20万円が上限ですが、以下の場合は再度申請が可能です:
- 要介護度が3段階以上上がった場合
- 転居した場合
- 特に必要と認められる場合
自治体独自の住宅改修助成
介護保険の住宅改修費支給に加えて、自治体独自の住宅改修助成制度を設けているところもあります。介護保険と併用することで、より大規模な改修も可能になる場合があります。
移動・外出支援
福祉タクシー券
多くの自治体では、通院などの外出を支援するための福祉タクシー券を発行しています。要介護1でも申請できる場合が多く、年間数千円から数万円分のタクシー券が支給されます。
運転免許返納者への支援
運転免許を自主返納した高齢者に対して、タクシー券の支給やコミュニティバスの無料パスを提供している自治体もあります。要介護1で運転に不安を感じる方は、こうした制度を活用して免許返納を検討してみるのも一つの選択肢です。
移送サービス
NPOや社会福祉協議会が実施している、通院や買い物などを支援する移送サービスがあります。通常のタクシーよりも安価に利用できることが多く、付き添いのサポートも受けられる場合があります。
経済的支援制度
高額介護サービス費
1か月の介護保険サービスの利用者負担が一定額を超えた場合、超えた分が「高額介護サービス費」として後から払い戻されます。要介護1でも適用されるため、サービスを多く利用する月は注意しておくと良いでしょう。
特定入所者介護サービス費(補足給付)
施設入所やショートステイを利用する際、住民税非課税世帯などの条件を満たす場合、食費・居住費の負担が軽減される制度です。要介護1でも条件に該当すれば利用できます。
社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度
低所得世帯や高齢者世帯を対象に、生活費や福祉用具購入費などの資金を低利または無利子で貸し付ける制度です。要介護1でも利用可能で、経済的に困窮している場合の支援として活用できます。
日常生活自立支援事業
認知症などにより判断能力が不十分な方の福祉サービスの利用手続きや金銭管理を支援する事業です。初期の認知症がある要介護1の方も利用でき、日常的な金銭管理の不安解消に役立ちます。
相談窓口の活用法
地域包括支援センター
高齢者の総合相談窓口として、介護保険サービスだけでなく、様々な制度やサービスについての情報提供や相談に応じてくれます。要介護1の方こそ、積極的に活用すべき機関です。
居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)
要介護1の認定を受けると、ケアマネジャーに相談してケアプランを作成してもらえます。ケアマネジャーは介護保険サービスだけでなく、地域の独自サービスなども含めた総合的な支援プランを提案してくれます。
社会福祉協議会
地域の福祉サービスやボランティア情報など、公的サービス以外の支援についても情報提供してもらえます。特に、介護保険では対応できないちょっとした困りごとに対する支援を探す際に役立ちます。
意外な相談先:民生委員・児童委員
地域の身近な相談役として、必要なサービスにつなげてくれる役割を持っています。特に、制度の狭間で困っているケースなど、公的なサービスにつながりにくい場合の橋渡し役として頼りになります。
まとめ
要介護1と認定されても、介護保険サービスだけでなく、自治体独自の支援や税制優遇措置、各種割引制度など、様々な支援を活用することで、より充実した生活を送ることができます。
重要なのは、「要介護1だから使えるサービスは限られる」と決めつけず、積極的に情報収集することです。地域包括支援センターやケアマネジャーに相談し、自分自身や家族に合ったサービスや支援を探してみましょう。
また、自治体によって独自のサービスや制度が異なるため、お住まいの市区町村の窓口で確認することも大切です。「他の自治体にはあるのに、なぜうちの自治体にはないのか」と質問することで、新たなサービスの創設につながる可能性もあります。
要介護1は、「介護が必要になり始めた段階」ですが、適切なサービスや支援を利用することで、状態の悪化を防ぎ、できる限り自立した生活を続けることができます。この記事で紹介した意外な支援制度を活用して、ご本人もご家族も安心して生活を送れることを願っています。


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